おーい、応為

悪かったな、北斎の娘で

葛飾応為:長澤まさみ 監督・脚本:大森立嗣
COMMENT

長澤まさみ

[ 葛飾かつしか応為おうい ]

大森監督はパッションが強い方。演じることに向き合うだけでなく、自分と向き合う時間を与えてくれました。そして私の心に灯った火を見つめる眼差しに、映画作りへの深い愛情を感じます。

応為は子供の様な大胆さがあり、人の目を気にせず自由に生きます。 その姿は現代の女性の匂いを纏っていて、カッコいい。 知れば知るほど、味わい深い人物で、実際に彼女に会ってみたい、見てみたいと思いました。 絵や北斎に対しては、まるで人生そのものをかけているようで、勇ましく神々しい。 その全てに、私は憧れを抱きながら演じていました。 凄まじい情熱を持って生きた父娘の姿を温かい目で見てもらいたい。そんな映画になっていると思います。
どうぞ、宜しくお願いします。

大森立嗣

[ 監督・脚本 ]

応為という女性は北斎(鉄蔵)の娘で、北斎と生活を共にした。絵の才能は抜群だった。彼女の描く美人画は伸びやかで美しく、北斎は自分よりいいと言った。だが残されている作品は数少ない。谷川俊太郎風に言えば、応為はこんなことを思っていたのかもしれない。「そんなこと思ってないよ」と応為は言うだろうけど。

生きているということ
いま生きているということ
それは鉄蔵のイビキを聞くということ
煙草を吸うということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
それは葛飾北斎
すべての美しいものに出会うということ

長澤まさみさんの演じる応為がオンボロ長屋で佇む姿がいまだに脳裏に焼きついて離れません。おそらく長澤さんは、長澤さんとしてでも、応為としてでもなく、ただの一人の誰か、体の大きな、キセルと犬と絵が好きな、江戸の長屋にいるある女として、そこにいたのだと思います。

それは息をしているということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

長澤まさみと言う女優はいつだってすごくいい。でもこの映画の長澤まさみは最高かもしれない。